<vol.6> ヒロシとワイン

結論から言うと、ヒロシはワインを飲まない。アルコール類が苦手なのである。あ、前提を述べていなかった。ヒロシとは「・・・・ヒロシです」でおなじみの芸人だ。最近では“ぼっちキャンプ”でも再ブレイクし、本まで出版している。BS朝日の「迷宮グルメ異郷の駅前食堂」が好きで、毎回欠かさず観ていた。言葉が通じない外国のレストランで料理をオーダーする番組だ。

片言の英語と怪しい現地語を何とか駆使し、いつのまにか現地の人たちと仲良くなってしまうヒロシのコミュニケーション能力の高さには、いつも感心していた。5年間くらい続いたが、いろいろあったらしく、昨年ヒロシが降板してしまった。あまりのショックで食事も喉を通らなくなった(ワインは通った)。いまはスギちゃんが後を継いではいるが、どうもいまいちだなぁ~。

で、どうして“ヒロシとワイン”なのかと言うと、ヒロシ自身は飲めないけれど、毎回出てくる料理がじつにワインに合いそうなものばかりなのである。とくに、スペイン、ポルトガル、イタリア、トルコ、東欧諸国などの料理は、筆者の好みともぴったりだ。高級過ぎるレストランは避け、現地の人が日常的に利用する人気食堂を飛び込みで取材する。中でも何作かあるトルコ編シリーズは、ヒロシのキャラ全開で名シーン満載の傑作だ。

トルコと言えば、大の親日国として知られる。これは、日露戦争で日本がロシアのバルチック艦隊を打ち破ったことが、同じようにロシアの圧力に苦しんでいたトルコ(当時はオスマン帝国)の国民を熱狂させ勇気を与えたからと言われている。ただ、それ以上にトルコの人々に感銘を与えたのは、1890年(明治23年)に和歌山沖で沈没したトルコ軍艦「エルトゥールル号」の乗組員を、現地の日本人たちが不眠不休の必死の救助作業で助けたことである。

1990年(平成2年)12月、昨年亡くなったアントニオ猪木(当時参議院議員)が湾岸戦争で人質になった日本人解放にイラクへ向かった際、日本の航空機使用が拒否される中で、まっ先にチャーター機を用意してくれたのがトルコ航空であった。さらに、2011年(平成23年)の東日本大震災の際、トルコ政府は32名の支援・救助チームを派遣。「いまこそエルトゥールル号事件の恩返しを!」と、外国チームとしては最長期間である3週間に及ぶ献身的な活動を行ったという。

そのような恩義に厚いお国柄であるだけに、ヒロシの歓待されぶりも並外れており、尋常ではないくらい親切にされまくっていた。トルコ料理と言えば、フランス料理、中国料理と並ぶ世界三大料理に数えられる。とくに、ケバブを豪快に切り分けて盛り付け、焼きたての石窯焼きパンを頬張るシーンなどは圧巻!観ているだけではもったいなさ過ぎるので、ヒロシの代わりに赤ワインをいただきながら楽しんだものである。

チキンケバブサンド(右)とビーフケバブロール(左

トルコはイスラム教の国でありながら飲酒には寛容で、ビールや蒸留酒、ワインも造られており、街には居酒屋も数多い。オスマン帝国の時代は酒類厳禁だったらしいが、ちょうど100年前、現在のトルコ共和国が建国された際に政教分離で世俗主義が取り入れられ、飲酒の習慣が広まったとのこと。ただ、ラマダーン(断食月)期間中だけは、どんな酒好きな人でも“自主禁酒”に徹し、信仰との折り合いをつけることにしているという。

さて、ヒロシが迷宮グルメを降板して淋しい限りだが、もう一つの人気番組BS-TBSの「ヒロシのぼっちキャンプ」が、最近なぜか“迷宮グルメ化?”する傾向にある。先日の回など、前編まるまる30分間まったくキャンプシーンがなく、古民家の蔵探索と地元スーパーでの買い物に当てていた。また、アルコールもまったくダメという訳ではなく、焼酎などを微量程度ならいけるらしい。いずれぜひ、少量でもワインを嗜むヒロシの姿を観たいものである。

ヤクーツ(YAKUT)
生産地:トルコ・東アナトリア地方カヴァクリデレ
生産者:カヴァクリデレ
品 種:オクズギョズ・ボアズケレ主体
価格帯:1900円(税抜)~

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