4月13日より、大阪市此花区の夢洲において「EXPO 2025大阪・関西万博」が開幕する。開催を巡っては、出展者が集まらないとか、工期が間に合わないとか、チケットが売れてないとか、さまざまに言われていたが、何とか開幕までこぎ着けることになったらしい。
なぜ、突然このワインブログで万博の話をするのかというと、じつは万博とワインとは歴史的に見て、浅からぬつながりを持つ関係にあるのだ。「第1回パリ万国博覧会」が開かれたのは、1855年のこと。ナポレオンの甥にあたるナポレオン三世が、万博を通じてフランス産業の国際的競争力の向上や自由貿易の促進を図り、自身への民衆からの支持を強固にしようと企図したものだ。
フランス第二帝政の皇帝・ナポレオン三世
ナポレオン三世は、この万博を“メイド・イン・フランス”製品を世界に売り込む最大のチャンスととらえたのだ。フランスの代表的産品といえば、当時もいまもワインである。世界各国からの来場者に、銘醸地であるボルドーのワインをお土産として買ってもらい、フランス製品のブランド力を一気にアップさせようと考えたのだ。ただし、そのためには大きな問題があった。
第1回パリ万博会場となった「産業宮」 (Palais d’Industrie)
それは、ボルドーワインは種類が多すぎて、何を買って良いのかわからないということだ。そこで考え出されたのが、“格付”ということなのだ。格付については、以前に<vol.21>でも詳しく述べたが、現在では60を超えるボルドーのシャトー(生産者)が1級から5級までに細かく格付されている。その始まりが、この第1回パリ万博だったのだ。
また、1867年の第2回パリ万博では、<vol.71>でも紹介した微生物学者ルイ・パスツールの「低温殺菌法」がグランプリを受賞している。ワインの腐敗を防止する画期的な技術であり、この発明により世界各国へワインの輸出が可能となり、フランスワインの名声をより高めることになる。ちなみに、この年の万博には江戸幕府の使節団も参加しており、新一万円札の顔である渋沢栄一も幕臣として随行している。彼はアルコールはあまり強くなかったらしいが、シャンパンだけはお気に入りでよく飲んでいたそうだ。
古い話ばかり続いたが、新しい話題もある。今回の大阪・関西万博に、フランスのアルザス地方のワインがフランスパビリオンのゴールドパートナーとして出展するというのだ。一つのワイン産地が国際博覧会のパビリオンに加わるというのは、史上初のことらしい。アルザスと日本とは、幕末に日仏通商修好条約を結んで以来、和服の原料となる同地の毛織物布地を輸入していたなど160年以上に及ぶ縁があるということだ。
また、アルザスはライン川を隔ててドイツと国境を接する地域でもある。このため、1000年以上に渡り領土を巡る紛争が絶えず、ドイツに併合されていた時代もある。この影響は食文化にも色濃く表れており、シュークルットやキッシュ、フォアグラのパテなど、ドイツとフランスが混じり合ったものが多いことで知られている。
ワインにおいても然りである。アルザスと聞いて、まず思い浮かぶのは、白の辛口ワイン「リースリング」である。じつは、この品種、ドイツワインの代表品種でもある。青リンゴのようなキリッと爽やかな酸味は、他の白ワインと一線を画する独特の味わいだ。近年は、有機農法や循環型農法で造られたものが高い評価を受けており、この機会にぜひお試しすることをおすすめしたい。
アルザス リースリング ロベールクリンゲンフュス
(Alsace Riesling Robert Klingenfus )
生産地:フランス アルザス・ロレーヌ地方
生産者:ロベールクリンゲンフュス
品 種:リースリング
価格帯:1600円(税抜)~