<vol.66> 白菜とワイン

冬といえば、やはり鍋である。鍋に付きものといえば、白菜である。スーパーの店頭には、鍋用のスープなどと一緒に、白菜が山積みされているのを見かけるようになった。白菜というと漬物などでもおなじみで、和食には欠かせない日本古来の伝統野菜かと思い込んでいたが、じつはそれほど古くからあるのもではないらしい。いったい、どういうルーツを持つ野菜なのだろうか。

スーパーの店頭に並ぶ「白菜」

白菜と似た野菜に、キャベツがある。どちらもアブラナ科の植物で、いわゆる親戚みたいな関係だ。“キャベツ”はまず名前がカタカナであり、洋食には付きものであるだけに、明治の文明開化以降に西洋料理とともに入ってきたのかと思っていたら、江戸時代の初期、長崎の出島にオランダからもたらされた、けっこう古いものだという。

キャベツも白菜も、その先祖は地中海沿岸が原産地らしい。現在の結球型の白菜は、11世紀に中国で改良されて生まれたものだ。日本に伝わったのは江戸時代の後期、幕末の頃ではあったが、国内での栽培がうまくいかず、広く普及するようになったのは、ようやく大正末期から昭和初期にかけてのこと。じつは、思っていた以上に新しい野菜だったのだ。

ちなみにレタスについてだが、生野菜サラダが広く普及するようになるのが1970年代以降のことなので、当然もっとも新しい野菜かと思っていたが、これが大違い。なんと!奈良時代に中国から伝わったものなのだ。奈良のある大和地方の伝統野菜でレタスの一種「ちしゃ」が、これにあたる。もちろん、サラダで食べることはなかったはずで、主に煮物や汁物の具にしていたようである。

話を白菜に戻す。煮る、炒める、和える、漬けるなど、白菜の調理方法は幅広い。あっさりと淡泊な味わいは、どんな具材とも合わせやすく、いまや和食の主要野菜として盤石な地位を保っている。鍋物に関しては、およそほとんどのものに使われているが、白菜を主役にした鍋といえば、豚バラ肉と白菜を交互に重ねて煮込んだ「ミルフィーユ鍋」だろう。

白菜と豚バラ肉の「ミルフィーユ鍋」

この鍋のポイントは、水は加えず日本酒を鍋に半分ほど注ぐことだ。白菜からエキスたっぷりの水分が出るので、それで十分に煮込むことが出来る。白菜そのものの味わいをじっくりと堪能するには、もってこいの料理である。合わせるワインは、やはりライトボディのピノ・ノワールが一推しだ。巻末に挙げたアルゼンチンのやや酸味が強めのピノと合わせてみたところ、ポン酢との絡み具合も抜群で、じつに良い相性であった。

白菜と菜の花

ところで、白菜は前述の通りアブラナ科である。“油菜”とは、つまり「菜の花」のことであり、その種から採取された油が、不飽和脂肪酸を多く含み健康ブームで注目の“菜種油”となる。そうなると、菜の花とは“白菜の花”ということなのか?という疑問が沸くが、じつはその通りなのだ。上の写真を見てほしい。白菜から見事な菜の花が咲いているではないか!白菜とは、若い葉を早取りして食べるもので、そのまま育てると菜の花となるのだ。

酢で和えた「菜の花ニシン」

菜の花は、蕾(つぼみ)や葉、茎を食べることが出来る。旬は早春ではあるが、せっかく白菜との関係が明らかになったところなので、ワインに合う一品を紹介しよう。身欠きニシン(半生身欠き)と一緒に酢で和えた、「菜の花ニシン」である。ニシンの世界史的意義については<vol.36>でも詳しく述べたが、菜の花はニシンとも良く馴染み、下記のピノでも十分にイケるのだ。それにしても、あまりに身近すぎて気づかなかったが、白菜とは花も種も葉も、すべて無駄なく活用できる偉大な野菜なのだった。

ドン・ダヴィ ピノ・ノワール レゼルヴァ
(Don David Pinot Noir Reserve)
生産地:アルゼンチン・カファジャテ地方
生産者:ミッシェル・トリノ
品 種:ピノ・ノワール
価格帯:1300円(税抜)~

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