以前に<vol.52>でギリシャについて少々調べた際、地中海料理の代表的なものとしてクスクスの存在に興味を持ってしまった。「クスクス(couscous)」は、日本ではあまり馴染みがないが、北アフリカ一帯やフランス、イタリア、ギリシャなど地中海に面する国々では“国民食”と呼ばれるほどよく食べられている料理なのだ。
クスクスのギリシャ風タブレ
そもそも、クスクスとは何なのか?じつは、分類的にはパスタの一種となる。乾燥パスタに用いられる硬質小麦のセモリナ粉を捏ねて粒状にしたもので、「世界最小のパスタ」と呼ばれているのだ。他のパスタと同様に乾燥状態で保存が効き、食べたいときに簡単に戻すことが出来るので、日常食として、また保存食として、幅広く活用されているという。
上記の写真は、筆者が試しに作ってみたものだが、たしかに拍子抜けするくらい簡単であった。何しろ、お湯をかけて掻き混ぜ、ラップをかけて10分間蒸らすだけなのである。“お湯をかけて待つだけ”とは、カップヌードル並みの手軽さである。ただし、具材は別に用意する必要があるので、あり合わせのトマトや胡瓜を刻み、オリーブオイルとレモンをかけ、「タブレ」というサラダ風クスクスにしてみたというわけである。
クスクスは、“マグレブ”(Maghreb)と呼ばれるチュニジア、アルジェリア、モロッコ、西リビア、モーリタニアなどの国々が連なる北アフリカ地域での発祥とされる。その起源は紀元前3000年頃とも紀元前3世紀頃とも諸説があり、はっきりとしない。ただ、古代ローマ時代にはすでに食べられていたと伝えられている。
北アフリカ以外で、もっとも多くクスクスを食べている国の一つがフランスだ。フランスは19世紀から20世紀半ばにかけて、アフリカに多くの植民地を有しており、そこからの労働者が国内に大量に入り込んでいた。さらに、“ピエ・ノワール”(Pieds-noirs)と呼ばれる北アフリカ生まれのフランス人たちが、1960年代にマグレブ諸国の独立によって本国に帰国したため、そこでの食文化であるクスクスがフランス料理にも持ち込まれることとなったのだ。
クスクスはまた、大皿に盛り大人数で取り分けるのにも適している。そのため冠婚葬祭など、大勢の人たちが集まる場に欠かせない定番料理としてメインに扱われているのだ。バリエーションも多彩だ。イスラム圏の国々では羊肉や鶏肉を入れることが多いが、フランスやイタリア、ギリシャでは豚肉や牛肉、魚介類など、さまざまな具材が用いられる。シチリアでは、毎年9月最終週に「クスクス祭」が開かれており、“イカ墨のクスクス”などは、超人気メニューとなっているそうだ。
考えてみれば、そもそもクスクスとは“パスタ”なのだ。通常のパスタが、例えば日本ならばタラコパスタや明太子パスタ、鮭クリームパスタ、納豆パスタなど、日本にしかない独自メニューを生み出しているように、その国や土地ごとのさまざまな食べ方があっていいものなのだ。合わせるワインも、具材との相性が決め手となる。魚介ならばライトボディの赤か白、肉類ならば赤のフルボディからライトボディまでをお好みで選べばいいのである。
さて、筆者の試作品だが、キャプションに“ギリシャ風”としたのは、たまたまタコのブツ切りがあったので、アクセントに混ぜてみたからなのだ。<vol.52>でも述べたが、タコはギリシャ料理にはおなじみの食材だ。ということで、ギリシャの土着品種「クシノマブロ」から作られた赤ワインを合わせ、遙か地中海に想いを馳せながら、自作クスクスを堪能したのであった。
キリ・ヤーニ カリ・リーザ(Kir-Yianni Kali Riza)
生産地:ギリシャ・PDOアミンデオン
生産者:キリ・ヤーニ
品 種:クシノマブロ
価格帯:2000円(税抜)~