<vol.57> ハムカツとワイン

ハムカツがいま、静かなブームになっているらしい。スーパーの揚げ物コーナーでは、揚げ立てのハムカツがよく売れており、コンビニでも“ハムカツサンド”が人気商品になっているという。ハムカツといえば、かつては大衆居酒屋の定番メニューで、ペラペラの薄切りハムをカツ風に揚げた、軽いおつまみのイメージだった。ところが、である。筆者がよく購入するのは、ご覧のように“超極厚”なのだ。これはもう、立派な一品料理ではないだろうか。

筆者お気に入りの“超極厚ハムカツ”

上記のハムカツは、近所のスーパー・ダイイチ札幌平岸店で購入したものだ。栃木県宇都宮市にあるハガフーズの業務用ハムカツを店舗で揚げ、パック詰めして販売しているのだ。この会社は日本でも珍しいハムカツ専門メーカーであり、原料ハムの製造や使用するスパイスの調合などを独自の製法で一貫して行い、「宇都宮ハムカツ」のブランド名で全国のスーパーや惣菜店へ出荷している。

ハガフーズの「宇都宮ハムカツ」

超極厚と言ってもハムなので、合わせるワインは肉料理に定番のフルボディでなくとも、ピノ・ノワールのようなライトボディでも十分にイケる。もう少しタンニンを効かせた味が欲しい場合は、ピノタージュという品種がおすすめだ。ピノ・ノワールとエルミタージュ(サンソー)を掛け合わせた南アフリカ独自の品種で、軽めのタンニンがハムの旨味を引き立て、じつに良い相性となるのだ。

ところで、ハムカツに使われているハムは“プレスハム”である。これは、ボンレスハムやロースハム、骨付きハム、ももハムなど、欧米で食べられているものとは異なり、日本で独自に開発されたものだ。1930年代にウサギ肉の挽肉を固めて成型したのが始まりとされるが、本格的な普及は1947年(昭和22年)に伊藤食品工業(現在の伊藤ハム)が、豚肉に牛肉、馬肉、山羊肉など、さまざまな畜肉を混ぜて商品化。それを肉屋や惣菜店が、コロッケなどと一緒にカツ風に揚げて売り出したのが始まりだという。

現在のハムカツの主力ブランドは上記の宇都宮ハムカツだが、これは主に東日本が中心で、西日本では「長崎雲仙ハム」という長崎のハムメーカーのものが人気を集めている。どちらも加熱することでいっそう美味しさが引き立つよう、原料肉やスパイスを厳選して仕上げており、ハムカツに最適なハムとしてのプレスハムの価値を確かなものにしているといえる。

一方、海外でもフランスやスイスには「コルドンブルー」(cordon bleu)という、ハムカツによく似た家庭料理がある。ももハムや薄切り肉にチーズを挟んでカツレツ風に揚げたもので、厚さはないがチーズと一体となることで料理としての華やかさが増した感じとなる。以前、札幌の創作居酒屋のような店でハムカツを注文したら、中にチーズが挟まっていたので驚いたことがあるが、あれはコルドンブルーをヒントにしたものだったのかもしれない。

チーズが特徴的な「コルドンブルー」

コルドンブルーが誕生したのは、第二次世界大戦後の1949年頃とされる。日本のハムカツも1947年とほぼ同時期に登場しているのは、同じく戦後の食糧難を乗り切るために生み出された“食の知恵”だったからなのかもしれない。このように必要に迫られて誕生したものだからこそ、両者とも庶民の味として愛され続けているのだろう。ピノタージュもまた、どんな料理とも気軽に合わせられる“庶民のワイン”として広く親しまれ続けているのだ。

KWVクラシック・コレクション ピノタージュ
(KWV Classic Collection Pinotage)
生産地:南アフリカ・西ケープ州
生産者:KWV(南アフリカ・ブドウ栽培協同組合)
品 種:ピノタージュ
価格帯:1200円(税抜)~

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