仙台在住の友人・S乃さんから、「奈良漬」が送られてきた。宮城県岩沼市で創業200年を超える老舗酒造・相傳(あいでん)商店が、伝統の技で丹念に仕上げた白瓜の粕漬である。奈良漬はその名の通り、奈良で生まれた粕漬だ。近年は、胡瓜、生姜、ゴボウ、セロリ、西瓜などを使った、さまざまな奈良漬も出回っているが、やはり代表格といえば、奈良時代からある白瓜なのである。
刻み奈良漬のクリームチーズ和え
この奈良漬がワインと良く合うのだ。とくに、細かく刻んでクリームチーズと和え、クラッカーやパンに乗せて食べると、もう鉄板級の好相性なのだ。合わせるワインは、赤でも白でもイケる。普段は赤好きの筆者ではあるが、今回は巻末に挙げたカリフォルニアの白、シャルドネで合わせてみた。このワインは、樽発酵・樽熟成で造られているだけに、しっかりとした“樽香”がある。それが、奈良漬の持つ独特の風味と出合うことで、絶妙な味わいとなるのだ。
相傳商店は、宮城の銘酒「名取駒」の蔵本として知られる。毎年酒造りの際の副産物として出る酒粕を使い、何度かの漬け替えを行いながら、2年以上かけてじっくりと漬け込むことで、他にはない上品な香味を生み出すという。農林水産大臣賞の受賞歴もあり、現在では酒蔵としてよりも“奈良漬の会社”としての知名度のほうが高まっているそうだ。
奈良漬の味を決めるのは、何といっても“酒粕”の良し悪しだという。奈良の酒は安土桃山時代から江戸時代中期にかけて「南都諸泊(なんともろはく)」と呼ばれ、最上級の酒として名声を保っていた。“南都”とは、京都から見た奈良(平城京)の呼称。“諸泊仕込み”とは、精白米を用いた清酒を指す。そこから生じる良質の酒粕こそが、奈良の粕漬を“奈良漬”として全国ブランドにまで高めた最大の要因なのだ。
奈良漬とクリームチーズだが、あらかじめ奈良漬を細かく刻みクリームチーズと混ぜ合わせたものが、すでに商品化されている。ワインと合わせやすいように、ブラックペーパーや山椒、柚子、スモークなど、さまざまな風味を付けたものがあり、味わいは多彩だ。さらに、下記写真にあるようにワインとセットにしたものも販売されている。このワインはボルドーの赤なので、濃厚なフルボディタイプでも十分に合わせられるということだろう。
「奈良漬×クリームチーズ」とワインのセット
奈良漬は、酒粕に漬かることで、当然アルコール分が含まれている。度数は3.5~5%ほどなので、一見ビール並みだ。一昔前、奈良漬を食べてクルマを運転したら、酒気帯び運転にならないのか、ということがよく言われた。警察庁の実験では、呼気中アルコールの基準値に達するには、400~500グラムと大量に摂取する必要があり、これまでに検出された例はないそうだ。ちなみに、酒気帯び運転で検問に引っ掛かったら「奈良漬を食べ過ぎて・・・・」と言い訳すれば良い、という冗談があったが、これが通ったケースもないということだ。
ところで、鰻屋で鰻重などを注文すると、付け合わせとして奈良漬がよく添えられている。あまり意識したことはなかったが、じつはこの両者もまた、ベストマッチの関係にあるのだ。奈良漬のべっこう色は、酒粕と白瓜の発酵により生まれる「メラノイジン」という抗酸化物質の色。これが、ウナギに豊富に含まれているビタミンやミネラルの吸収を助けてくれる。また、奈良漬に含まれる「ペプチド」は、ウナギの脂肪分を中和させる働きをするのだ。
ウナギについては、以前に一度<vol.22>でもふれたことがある。ただ、さすがに奈良漬にまでは考えが及ばなかった。この夏の土用丑の日には、ウナギに奈良漬を添え、これにワインを合わせることで、三位一体で味わってみようかと、いまから画策しているところなのである。
ロンジェヴィティ シャルドネ(Longevity Chardonnay)
生産地:アメリカ・カリフォルニア州
生産者:ロンジェヴィティ
品 種:シャルドネ
価格帯:1100円(税抜)~