<vol.51> サバ缶とワイン

“サバサンド”なるものを初めて知ったのは、10年ほど前にフジテレビ系列で放送されていた「ヨルタモリ」という番組を観ていたときだ。それまで、魚の鯖(サバ)をパンに挟んで食べるなど、考えたこともなかった。ところが、番組内で紹介されたタモリ直伝のレシピで恐る恐る試してみたところ、予想外の美味しさにすっかりハマってしまったのである。

作り方はこうだ。まず、塩サバを焼く。この場合のサバは脂の乗ったノルウェー産に限る。それを、軽くトーストした食パン2枚で挟むのだが、とくにバターを塗る必要はない。サバの上にレタスを数枚乗せ、その上からマヨネーズを塗る、お好みで醤油を数滴垂らしても良いらしい。さらに、その上にパンを乗せて完成である。きわめてシンプルだが、サバからあふれ出るたっぷりの脂がパンに染み渡り、じつに美味!赤ワインとの相性も抜群なのである。

そもそも「サバサンド」とは、トルコの名物料理なのだという。イスタンブールでは、広場や船着場などの屋台でサバがジュージューと焼かれ、「エキメキ」(ekmek)と呼ばれるトルコパンに挟んで売られているそうだ。<vol.30>「鯖の味噌煮とワイン」では、代表的な和食である“味噌煮”と日本ワインの代表品種「マスカット・ベーリーA」との相性について述べた。ただ、サバは世界中で食べられており、“和食”の範疇ではとても語り切れないものなのだ。

日本のサバ漁獲量は2018年(平成30年)には世界第1位であった。現在は中国やインドネシアに抜かれてしまったが、それでも世界有数のサバ大国としてつねに上位に君臨し続けている。日本でサバと言えば、味噌煮をはじめ、塩焼き、〆サバ、押し寿司、竜田揚げなどで多く食べられているが、アジアやアフリカではトマト煮、ヨーロッパではオイル煮や香草焼きなどが主流となる。ただ、“サバは足が速い”と言われるように腐りやすいため、近年は缶詰の活用も広がっているそうだ。

 さまざまな味付けの国産サバ缶

日本でも、「サバ缶」の人気は高まる一方だ。かつて魚の缶詰といえば、「ツナ缶」が長年に渡りトップであった。ところが、2010年代中頃から社会現象といえるほどの“サバ缶ブーム”が起こる。青魚に含まれている不飽和脂肪酸が多いことで、美容・健康への期待が高まったことが大きいが、何といっても調理済みで日持ちし、しかも安いからである。2016年(平成28年)には、ついにツナ缶を抜き、第1位に躍り出るのだ。

サバ缶と言えば、和風味の味噌煮と水煮くらいかと思っていたが、上記の写真にあるようにトマト煮をはじめ、オリーブオイル漬け、レモンバジル味、アクアパッツァ味、パプリカチリソース味など、国産だけでもさまざまな“洋風味”のものが出回っている。当然、サバサンドにも活用出来るのだ。生の塩サバの難点は、どうしても骨が残ってしまうことだが、缶詰の場合は骨ごと柔らかく煮込んであり、丸ごと食べられるのがありがたい。

レシピは基本的にはタモリ流と共通で大丈夫だが、筆者は食パンよりフランスパンが好きなので、バゲットサンドにしている。なぜかと言えば、その方がだんぜんワインに合うからだ。また、生サバの場合でも、たまにスーパーで「骨取りノルウェーさば西京漬け」を見かけるとよく購入する。骨が気にならず、塩サバよりも味に深みが出るので、赤ワインとの相性がさらに良くなる。

合わせるワインは、<vol.32>「秋刀魚とワイン」でも紹介したが、チリの「コノスル オーガニック ピノ・ノワール」がおすすめだ。青魚系には、果実味のしっかりしたオーガニック栽培のピノが最高に合う。サバ缶は、大型スーパーの「イオン」や、輸入食品専門店の「ジュピター」と「カルディ・コーヒーファーム」が比較的種類が揃っている。サバサンドに限らず、そのままでも十分にイケるので、気軽にワインに合わせて楽しんでみてほしい。

コノスル オーガニック ピノ・ノワール(Cono Sur Organic Pinot Noir)
生産地:チリ・コルチャグアヴァレー
生産者:ヴィーニャ・コノスル
品 種:ピノ・ノワール
価格帯:1100円(税抜)~

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