先日、同じ町内会のT村さんから自家製の「パイカ」なるものをいただいた。初めて聞く名前で、いったいどういうものなのか想像がつかなかったが、豚バラ軟骨を圧力鍋で煮込んで柔らかく調理したものだという。ワインにも合うということなので、ありがたくいただいた次第である。
パイカ(豚バラ軟骨)の煮込み
ワインは、赤のフルボディタイプがおすすめだ。王道のカベルネ・ソーヴィニヨンでもいいが、家にスペインの土着品種「モナストレイル」を使ったオーガニックワインがあったので、それと合わせてみた。軟骨周囲にはけっこう肉が残っている。いわゆる“骨付き肉”だ。これと、軟骨の程よい歯応えが一体となり、赤ワインとの相性も抜群であった。
それにしても“パイカ”とは聞きなれない名前である。どうやら、2006年(平成18年)に青森県三沢市のイベントで出されたのが始まりらしい。三沢市は、国内有数の養豚生産量を誇ることで知られる。豚バラ肉ブロックを切り落としたあと、普通、軟骨は捨てられる。コラーゲンたっぷりのこの部分を「もったいない」と感じ、これを使った“三沢名物”が出来ないかと考えて生み出したものだという。
現在、三沢市内には、パイカ煮込み、パイカ鍋、パイカラーメン、パイカカツ、パイカカレーなど、さまざまなパイカ料理を出す店があるそうだ。じつは、似たような料理は沖縄にもある。豚の骨付きバラ肉、いわゆる「ソーキ」である。これを沖縄そばに乗せた「ソーキそば」は有名だ。ほかにも、昆布や大根、冬瓜などと煮込んだ「ソーキ汁」をはじめ、炒め物や煮込みなど、さまざまな料理に使われている。
筆者は最初、三沢のパイカは沖縄のソーキの影響を受けているのではないか、と考えた。多少はあるのかもしれないが、それにしても“パイカ”と“ソーキ”では、言葉の印象と語感が違いすぎる。そこで、ふと思い当たったのが、以前に台湾料理店のメニューで見た「パイコー麺」という麺料理だ。注文こそしなかったが、写真には大きな肉が乗った麺が写っていたのを憶えている。
“パイコー”とは、中国語で「排骨(パイクォウ)」であり、れっきとした点心の一品だ。なかでも「蒜香蒸排骨(ソンシャンチュンパイクォウ)」、つまり「豚の骨付きバラ肉のニンニク蒸し」は、広東料理の王道としても知られる。ほかにも、ご飯に乗せた「排骨飯(パイクォウファン)」、具だくさんスープの「排骨湯(パイクォウタン)」など、料理法は多彩だ。おそらく、三沢のパイカは、この“パイコー”から来ているのではないか、と筆者は推測している。
ところで、豚の骨付きバラ肉とは、早い話が「スペアリブ」であり、世界中で食べられている。とくにアメリカではバーベキュー料理の定番で、ソウルフードと言っていいくらいおなじみだ。また、南米のチリには「カスエラ(cazuela)」という煮込み料理がある。牛や豚のスペアリブ、鶏の手羽先や手羽元を野菜と一緒に煮込むもので、骨からの旨味や軟骨のコラーゲンが溶け出し濃厚な味わいになるという。
チリはスペイン領だった時代が長く、食文化においてもスペインの影響が色濃く残されている国だ。そう考えると、同じく軟骨料理であるパイカと、スペインワインのモナストレイルとの相性が良かった理由も合点がゆくのである。ということで、下記に一本挙げておいた。テンプラニーリョと並ぶ赤の名品種を、この機会にぜひお試しを。
カスターニョ・イェクラ オーガニック(CASTANO HECULA ORGANIC)
生産地:スペイン・ムルシア州イェクラ
生産者:ボデガス・カスターニョ
品 種:モナストレイル
価格帯:1200円(税抜)~