秋刀魚(サンマ)の不漁が続き、いつのまにか“高級魚”となってしまい久しいが、今年はやや豊漁らしい。といっても、あくまでも“昨年よりは”というレベルで、小さなものでも一匹200円以上、大きなものは1000円近くにもなる。もう20年以上前、根室出身のK原さんから根室から届いたばかりの秋刀魚を数匹いただいたことがあるが、あれは大きくて脂が乗っていて最高だったなあ。
スーパーに並ぶ「旬の秋刀魚」
秋刀魚といえば、古典落語「目黒の秋刀魚」でもお馴染みで、江戸の殿様が庶民の食べ物であり下魚とされていた秋刀魚の旨さを絶賛するという話だ。ただ、当時は淡泊な魚が好まれており、油脂の多い秋刀魚は主に行燈(あんどん)用の油を搾るために獲られていたらしい。庶民の味として本格的に広まるのは、1940年代以降に集魚灯による棒受け網漁で大量に獲れるようになってからのことだ。
さて、この秋刀魚であるが、どのペアリングブックを見ても“赤ワインと合う”と出ている。以前に<vol.14>「焼き魚とワイン」でも書いたが、ホッケやサバの塩焼きなどには白ワインを合わせるのが多数派であり、これに対し筆者は醤油を垂らした大根おろしを乗せることで、赤でも十分に合うと主張し続けている。ところが秋刀魚の塩焼きに関しては、いきなり赤に合うと書かれているのだ。これはいったい、どういうことなのだろうか。
まず言えるのは“脂の乗った”という言葉でお馴染みの通り、旬の秋刀魚の最大の特徴である良質な脂肪分である。ドコサヘキサエン酸などがたっぷりと含まれ、悪玉コレステロールを下げ血液をサラサラにする効果もあるという。そして、ほど良い苦味を持つハラワタと、血合いに含まれた鉄分の風味である。これは、たしかに赤に合いそうだ。ヘタな白ワインだと、生臭さだけが強調されてしまいかねないように思う。
赤でおすすめしたいのは、やはりピノ・ノワールだ。巻末に挙げたチリの「コノスル オーガニック ピノ・ノワール」はコスパにも優れた一本で、この値段でこのクオリティの高さは、関税が撤廃されたチリでなければありえないだろう。ラベルの自転車は「自然のサイクル」を尊重した、クリーンなオーガニック栽培のシンボルとして描かれたもの。作業員たちはみな、農園まで自転車で通っているそうだ。
白も合わないわけではない。“海のワイン”と呼ばれ、塩味が少し感じられるアルバリーニョや、柑橘系の酸味が効いたリースリングやソアーヴェなどは良く合うはずだ。<vol.30>で紹介したキリッと辛口の甲州も、酢橘やカボスまたはレモンを身に搾れば酸味が加わり十分にイケるように思う。何はともあれ、この時期は秋刀魚である。やや豊漁といわれる今年の機会を逃さず、ぜひ試してみてほしい。
コノスル オーガニック ピノ・ノワール(Cono Sur Organic Pinot Noir)
生産地:チリ・コルチャグアヴァレー
生産者:ヴィーニャ・コノスル
品 種:ピノ・ノワール
価格帯:1100円(税抜)~