<vol.29> かにかまとワイン

世界で一番“かにかま”を食べている国はどこか?「そんなもの日本に決まっているだろ!」と普通は思う。ところが、である。正解は、なんとフランスなのだ。フランスに限らず、かにかまは世界中で食べられており、生産量で見ると1位がEU、2位が米国、日本は3位という位置づけになる。

スギヨの人気商品「大人のカニカマ」

海外で「かにかま」は“SURIMI”(スリミ)という名で販売されており、寿司やサラダはもちろん、サンドイッチ、ピザ、グラタン、キッシュ、ムース、アヒージョ、スープ、煮物、揚げ物など、さまざまな料理に用いられている。とくにフランスでは、手軽なシーフード素材として、家庭料理に欠かせない存在となっているのだ。

当然、ワインとも合わせて食べられている。好みにもよるが、ボルドータイプのフルボディ以外なら、赤・白問わずどんなワインでもだいたいはマッチするはずだ。ただ、何かおすすめを挙げるとすれば、日本同様に魚介料理の豊富なイタリア・シチリア島の特産であるネロ・ダーヴォラかと思う。<vol.4>でも紹介したが、別な銘柄を巻末にあげておいた。

かにかまはいまから50年ほど前の1972年(昭和47年)、石川県七尾市の蒲鉾メーカー(株)スギヨが開発した。といっても、最初からかにかまを作ろうとしていたわけではなく、もともとは“人工クラゲ”の開発を目指していたという。当時、中国産クラゲの輸入量が減少しつつあり、それに代わる人工クラゲの開発が求められていたのだ。

人工クラゲの開発は順調に進み、社内の試食会でも本物そっくりの味と食感が大好評を得た。ところが、社員の一人がたまたま醤油をかけてみたところ、見る影もなく溶けてしまったという。何かの成分が化学反応を起こしたらしい。これでは、とても商品化は出来ない。何度か改良を繰り返す過程で偶然生まれたのが、カニの身の繊維質の食感に似た蒲鉾だったという。

最初のかにかまは、ほぐした状態で「かにあし」という名で売り出された。本物のカニそっくりの見た目と食感で、しかも安い!2ヵ月ほどで大ヒット商品となり、増産に次ぐ増産を重ねるまでになったが、同時に全国から苦情も殺到した。「本物のカニだと思って買ったのに、インチキではないか!」というものだ。“コピー食品”という言葉が、初めて週刊誌に登場するのものもこの頃だ。

ついに公正取引委員会も動き出し、「風味かまぼこ(かに風味)」という品質表示を明記することが義務づけられた。スギヨではこれを素直に受け入れ、人気落語家の林家こん平を起用して「♪カニのようで、カニではない♪」というテレビCMを制作し、全国に放映。結果的に、本物のカニそっくりの蒲鉾=「かにかま」という存在と知名度を、知らない人がいなくなるくらいに高めたのだった。

かにかまは、海外でも大ヒットした。かまぼこ類の持つ高タンパクで低カロリー・低脂質という優れた特性は、折からの日本食ブームもあり注目されつつあった。しかし、煉物製品特有のあの独特の食感が、とくに欧米人で苦手とする人が多く敬遠されがちだった。それを見事に解決したのが、かにかま最大の特徴である“繊維質”のほぐしやすさだったのだ。

かにかまは、インスタントラーメン、レトルトカレーと合わせ、“戦後日本の三大発明”と言われている。5年ほど前、インスタントラーメンの生みの親である日清食品の創業者・安藤百福をモデルにした物語が、NHKの朝ドラで放映されていた。

いまや“世界食品”となった「かにかま」も、これに勝るとも劣らない朝ドラ向きの題材だと思う。先般、『カニカマ人生論』幻冬舎を出版した、ものまねタレントの清水ミチコを脇役に絡めながら展開すれば、ヒット作となること間違いなしと思うのだが、どんなものだろうかなあ?

ザブ ネロ・ダーヴォラ(Zabu Nero d’Avola )
生産地:イタリア・シチリア州
生産者:ヴィニエティ・ザブ
品 種:ネロ ダーヴォラ
価格帯1200円(税抜)~

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