ときどき、布袋の「ザンギ」が無性に食べたくなる。“ザンギ”とは、言わずと知れた北海道のソウルフード、いわゆる“鶏の唐揚げ”のこと。「布袋(ほてい)」とは、日本唐揚協会が主催する「からあげグランプリ」で何度か金賞を受賞したことがある、札幌で7店舗を展開する中華料理店だ。
札幌の中華料理店「布袋」のザンギ
うまい唐揚げの条件として「外側はパリッ、中はサクッとジューシー」とよく言われるが、ここのザンギはそれが見事に徹底されている。その秘密は、中温、低温、高温と温度の異なる油を使っての、独特の3度揚げにあるらしい。酢醤油ベースのネギだれが付いており、これに漬けて食べると旨さがいっそう引き立つ。
ただ、残念なことにワインを置いているのは高級店の1店のみだ。出来れば気軽にワインと合わせて楽しんでほしいので、テイクアウトにするのが良いだろう。ザンギにはレモンなど柑橘類を搾るのが定番だが、ワインも同様に酸味の効いたものが良く合う。赤ならやはりピノ・ノワール、白ならリースリングがおすすめだ。
ちなみに日本唐揚協会によれば、全国各地にはさまざまなご当地唐揚げがあり、北海道の“ザンギ”もその一形態ということになる。「唐揚げ」という名称が登場するのは江戸時代初期からとされているが、油で揚げる料理自体の歴史はひじょうに古く、日本に伝わったのは何と奈良時代とのこと。遣唐使が当時の中国=「唐」からもたらしたと伝えられている。
ただし、揚げられていたのは豆腐や野菜、魚介類がほとんどで、“鶏”の唐揚げの登場は明治~大正を経て、昭和の初めまで待たなければならない。なぜなら、当時の鶏肉はたいへんな高級食材で、めったに食べられるものではなかったからだ。
1932年(昭和7年)、東京銀座の「チキングリル三笠(現・三笠会館)」のメニューにはじめて「唐揚げ」という料理名が登場する。若鶏の毛羽、ムネ、モモ肉をタレに漬け衣を付けて揚げるという、今日の唐揚げと同じスタイルだ。その数年後の1937年(昭和12 年)、北海道最古の中華料理専門店として知られる「陶陶亭(とうとうてい)」 が函館に開店。ここでは“骨なし鶏を唐揚げ”にした料理を出していたと伝えられている。
では、「ザンギ」という名称は、いつどこで生まれたものなのか?答えは、1960年代の釧路である。この時期はちょうど米国から「ブロイラー(食肉用若鶏)」が導入され、その普及拡大期にあたる。当時開店したばかりの焼き鳥店「鳥松」では、鶏一羽をまるごと仕入れたものをブツ切りにし、骨付きのまま唐揚げにして出していたのだという。
釧路「鳥松」の骨付きザンギ
その際に、中国語で鶏の唐揚げを意味する「炸鶏(ザーヂー)」をヒントに、「ザンギ」と名付けたということだ。もっと単純に考えれば、若鶏の散切り肉を揚げるのだから「ザンギリ唐揚げ」、略して「ザンギ」となったのではないかとも推測できる。鳥松では、ウースターソースをベースにした特性ソースが付いており、これがなかなかいける。やはりポイントは酸味を効かすということか。
ザンギはいま、鶏肉に限らずさまざまな素材を用いたものが登場してきている。筆者がとくに気に入っているのは「タコザンギ」だ。高温で引き出されたタコの旨味と、プリッとした食感がたまらない。そのほかにもエゾ鹿肉を用いた「鹿肉ザンギ」、一口大の鮭を揚げた「鮭ザンギ」、羊肉の新しい味わい方として注目の「ラムザンギ」など、じつに多彩だ。それらに合うワインとのペアリングについては、また追って紹介することとしたい。
ドミニク・ローラン ピノ・ノワール(Dominique Laurent Pinot Noir)
生産地:フランス・ブルゴーニュ地方
生産者:ドミニク・ローラン
品 種:ピノ・ノワール
価格帯:2800円(税抜)~