9月上旬に町内会主催のジンギスカンパーティに参加した。ジンギスカンには、肉を焼いてからタレに付ける“タレ付けタイプ”と、あらかじめタレに漬け込んだ肉を焼く“味付きタイプ”の2つの食べ方がある。当町内会では、味付きタイプの「長沼ジンギスカン」を味わうのが恒例となっている。
タレ付けタイプは主に道央・道南地方、味付きタイプは滝川など道北地方を中心に食べられているといわれる。筆者は函館の出身なので、ジンギスカンといえばタレ付けが当たり前で、味付けタイプはどうも食べる気になれず、長い間敬遠してきた。初めて食べたのは10年ほど前、新千歳空港リニューアルで新しく入った「松尾ジンギスカン」でのことである。
「松尾ジンギスカン」の味付きジンギスカン
まず、肉の旨さに驚いた。脂身の少ないロースを多く使っているとのことだが、タレに漬け込むことで、こんなに柔らかくなるものかと感心した。注文したグラスワイン(おそらくカベルネ・ソーヴィニオン)との相性も抜群で、この日以来、味付きタイプもちょくちょく買って食べるようになったのである。
ところで、ジンギスカンといえば、あの独特の鍋であるが、大きく分けて2つの形状がある。鉄鍋にスリット(切れ込み)の入ったものと、スリットなしのものだ。スリット入り鍋は先に肉を焼いてからタレを付けるタイプに多く用いられる。七輪に鍋を載せ高温で肉を熱することで適度に油が落ち、また煙に燻しながら焼くことで香ばしさをより引き立たせることが出来る。
スリットなし鍋は、味付きタイプに用いられる。スリット入りはもうもうと煙が出るため、もっぱら屋外で用いられるのに対し、スリットなしは油が落ちないのであまり煙が出ない。上の写真でもわかるように、白く上がっているのは煙ではなく主に“湯気”である。家庭用コンロに載せて、煮込むように熱するため、室内でも十分に使えるのだ。
羊料理の本場モンゴルには、日本のジンギスカンのような料理はないが、さまざまな羊料理があり、欠かせない薬味として用いられているものがある。それは「ニラ」である。ニラといっても日本のものとは若干異なり、モンゴル語で「フムル」といわれるニラ科の植物で、日本には「蒙古ネギ」という名で伝わっている。
以前、NHKのテレビ番組「ためしてガッテン!」で、このフムルの料理法が紹介されていた。まず、一束を3~5㎜くらいに細かく刻むのである。断面が空気に触れることで「アリシン」という成分が増え、旨さ増強効果や血管拡張効果、体を温める効果が高まるそうだ。日本でフムルは手に入らないが、通常のニラでも同じ効果があるというので、早速やってみた。
刻んだものを味見してみると、舌を突き刺すような強烈な辛さがあり、そのままではとても食べられそうにない。モンゴルでは塩漬けにするらしいが、たまたま家にベル食品の「成吉思汗のたれ」があったので、それに浸けてみることにした。1時間ほどして味見してみると、ほど良い辛みを残しつつ全体がまろやかな感じになっており、薬味として上出来な仕上がりとなっているではありませんか!
ジンギスカンには、シラー種の赤ワインが合う。<vol.19>では室蘭焼き鳥に合うワインとしてシチリア産のシラー「アランチョ」を紹介したが、味付きタイプは一般的に甘口なので、同じシラーで十分いける。ただし、上述の“モンゴル風薬味”を添えた場合はかなり辛さが際立つので、巻末に挙げたチリのシラー「デル・スール」がおすすめだ。このワインはやや辛口なので、肉を焼いてからタレを付けるタイプにも良く合う。ジンギスカン専門店の「ヤマダモンゴル」でも置いている。
モンゴル風薬味はジンギスカンだけでなく、冷や奴やチーズに載せてもよく合う。モンゴルではフムルを羊料理の薬味だけではなく、餃子の詰め物にしたり、チャーハンに入れて一緒に炒めたり、さまざまな料理に活用しているそうだ。大相撲で大活躍のモンゴル力士たちの強さの源泉も、このフムルにあるのかもしれない。ニラさえあれば簡単なので、みなさんのお宅でも、ぜひお試しを。
デル・スール シラー レゼルヴァ(Aves del sur Syrah Reserva)
生産地:チリ・セントラルヴァレー
生産者:ビーニャ・デル・ペドリガル
品 種:シラー
価格帯:1300円(税抜)~