<vol.18> 縄文人とワイン

2021年(令和3年)、北海道と北東北3県(青森、秋田、岩手)の「縄文遺跡群」が、ユネスコの世界文化遺産に登録された。函館市南茅部地区の大船遺跡からは、約3500年前の縄文後期のものとされる「中空土偶」が出土され、現地の「函館市縄文文化交流センター」に展示されている。どこか遠くを見つめるような目が印象的で、通称“カックウ”と呼ばれ親しまれており、北海道初の国宝にも指定されている。

中空土偶(通称・カックウ)

じつはこのカックウ、出土はたしかに南茅部地区だが、作られたのは別の場所ではないかとも言われている。そもそも、この地区で土偶はほとんど出土していない。これほど精巧で完成度の高い土偶が単独で作られたとは考えにくく、似たようなものが青森、宮城、遠く関東でも出土していることから、津軽海峡を越えて運ばれてきたのではないかという説が有力となっている。

はたして縄文時代の航海技術で、津軽海峡を渡れるものなのか?この謎に挑んだ人たちがいた。2002年(平成14年)6月、北海道の旧・戸井町(現・函館市)と青森県の大間町の有志らが縄文時代の木舟を復元し、実験航海を行った。朝5時に大間を出発した手こぎの木舟は、午後2時に戸井の汐首岬に到着。9時間がかりの人力大航海ではあったが、明るいうちに十分に渡りきることが可能と証明された。これにより、北海道と本州が海を越えて結びついていたという「津軽海峡文化圏」の存在が、がぜん現実味を帯びることとなったのである。

一方、青森市にある「三内丸山遺跡」は、縄文時代前期中頃~中期末にかけての大規模集落跡だ。ここで1994年(平成6年)、ニワトコ、サルナシ、ヤマブドウなど、さまざま果実の種子が大量に出土したのだ。さらに同じ場所からは、ショウジョウバエ(=コバエ)のサナギも大量に出土した。コバエはアルコールの匂いに集まる習性がある小さなハエだ。ということは、果実酒を造っていた可能性が大いにあるということだ。

しかも、“ヤマブドウ”である。ヤマブドウは古くから日本各地に自生する野生種で、現在でもワインの原料として幅広く用いられている。ただ、縄文時代の技術で、現代と同じようなワインを造るのはいくらなんでも無理。しかし、自然発酵による果実酒の原型のような“縄文ワイン”ならば、まんざらありえない話ではない。大船遺跡ではまだ発見されてはいないものの、カックウを運んだ人たちが縄文ワインを手土産に携えてきた可能性も否定できないのである。

各地区の縄文遺跡群からはまた、鹿や猪の骨も大量に見つかっている。現代人にとって食肉といえば、牛、豚、鶏、羊などが一般的だが、これらの家畜肉を食べるようになったのは明治以降のことで、そのはるか昔から鹿や猪の肉が食べられていたわけだ。大船の縄文人たちは、それらの肉で遠方からの客人をもてなしながら、お土産にもらったヤマブドウの縄文ワインを一緒に楽しんでいたのかもしれない。

そう考えると、カックウがまるで“縄文ワインの伝道者”に見えてくるから不思議だ。ちょうどいま、北海道博物館では「北の縄文世界と国宝」展を10月1日まで開催中だ。カックウも、9月30日までは函館を離れ同展に特別参加している。ぜひこの機会にカックウとのご対面を果たし、その余韻を胸に納めつつ、エゾ鹿肉のジンギスカンあたりをペアリングのお供に、ヤマブドウのワインを味わってみてはいかがだろうか。

十勝ワイン 山幸(Tokachi Wine Yamasachi)
生産地:北海道十勝地方池田町
生産者:池田町ブドウ・ブドウ酒研究所
品 種:ヤマブドウ+清見(セイベル13503)
価格帯:2700円(税抜)~

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