<vol.14> 焼き魚とワイン

「肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワイン」。これは、一昔前によく言われていた常套句だ。しかし、物事はそう単純なものではない。結論から言うと、赤が合うか白が合うかは、味付けと料理法で決まる。素材自体の持ち味も大事だが、それ以上に相性を左右するのが調味料の使い方なのだ。

 ホッケの開き一夜干し

先日、本屋でワインの本を立ち読みしていたら、つい最近出た本にも「焼き魚に赤ワインはタブー」という記述があった。しかも、ホッケやサバの塩焼きを例に、赤ワインと合わせると生臭さが引き立ってしまうので避けるべし。合わせるならソーヴィニオン・ブランなど、スッキリとした白がお勧めとあった。

そんな馬鹿な!? ホッケやサバは赤で十分にイケるはず。筆者はかなりの頻度で食べている。とくにピノ・ノワールとの相性は抜群だ。自分の舌がおかしいのか、本の記述がおかしいのか、またしても疑問の渦が巻き起こる。いろいろ考えたが、どうもこれは<vol.4>の“イカの塩辛”で述べたのと同じパターンのようだ。

つまり、本で言っているのは、塩焼きをそのまま摘まんで味わうことを想定しているようなのである。たしかに、塩味だけだと赤とのバランスが取れない。生臭さが引き立つというのもわかる。だが、上の写真を見てほしい。何のために、たっぷりの大根おろしが添えられているというのだ。これに醤油を垂らし、脂の乗った身に載せて味わうのが一般的な食べ方ではないだろうか。

醤油味の料理とピノ・ノワールが合うのは、当ブログで何度も書いている通りだ。さらに、大根おろしとレモンが魚の臭みを消してくれるので、何も心配することはないのである。これは焼き魚に限らず、天ぷらにもそのまま当てはまる。最近は、天ぷらを塩で食べるのが人気のようだが、筆者はだんぜん“天つゆ派”だ。焼き魚と同じ理由で、これには赤が合う。白の場合でも、日本と同じ海産国であるスペインのアルバリーニョ(vol.5参照)をお勧めしたいところだ。

近年、北海道各地でブリの水揚げが急増しているせいか、新聞や雑誌などでよく料理法が紹介されている。赤ワインに合わせるなら、「ブリのガーリックステーキ」がお勧めだ。ポイントは、ブリの切り身を牛乳に数時間漬け込むこと。ブリ特有の臭みが見事に消える。あとは、スライスしたにんにくを油で炒め、その油を使ってブリの両面をこんがりと焼く。塩・胡椒で味を整えれば完成だ。ほど良い酸味のピノなら、言うことなしである。

では、赤ワインと合わせづらい魚料理とは何か?あえて挙げるなら、「寿司」と言わざるを得ない。寿司屋ではじめに、刺身を何品か注文する。これは、赤でも白でも合う。白身魚には白ワイン、赤身の魚には赤ワインが基本だが、白身魚でも醤油に浸けた段階で、上述の理屈で赤ともマッチするようになる。

握り寿司でも、ネタについては赤・白ともに合わせることは可能だ。問題は、「シャリ」なのである。白米を使用した酢飯に一番合うのは、同じく米から造られた日本酒だと思う。ワインで合わせるなら、白のソーヴィニオン・ブラン、リースリング、アルバリーニョ、ヴィオニエなどだ。さすがの赤好きの筆者も、白米を使った酢飯に赤はお勧めできそうにない。

握り寿司にシャリが付いている限り、最強は日本酒だ。あえてワインで合わせるなら、白ということになる。ただ、秘策として寿司酢に“赤酢”を使うという手があるそうだ。そうすれば、赤ワインにも合うらしいが、よほど馴染みの寿司屋でないと頼むのは難しそうだ。かといって、米料理に赤ワインがまったく合わない訳ではない。例えば、パエリアとテンプラニーリョの相性は抜群だ。その辺の話はまた、別の機会にでもじっくりと・・・・。

アナケナ・タマ・ヴィンヤード・セレクション(Anakena Tama Vineyard Selection)             生産地:チリ・アコンカグア・レイダヴァレー                                生産者:アナケナ                                                            品 種:ピノ・ノワール                                                           価格帯:1300円(税抜)~

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